過眠症
間に十分に寝ているにも関わらず、日中に強い眠気が生じる睡眠病の総称です。代表的な過眠症として、ナルコレプシーと周期性傾眠症があります。ナルコレプシーでは睡眠発作のほか、情動脱力発作、入眠時幻覚、睡眠麻痺という特徴的な症状がみられます。睡眠発作とは日中に強烈な眠気に襲われ眠り込んでしまう症状です。大事な会議や試験会場など普通なら居眠りすることは考えられないような場面でも数分から十数分眠り込んでしまいます。情動脱力発作は、笑う、怒る、驚くなどの強い感情に伴って身体の一部(時に全身)の脱力が急に生じる症状です。「膝が笑う」「しゃべりにくくなる」などと表現されることが多く、脱力発作後に眠ってしまうこともあります。入眠時幻覚は、寝入りばなに見る、現実的で鮮明な幻覚です。
カーテンの陰の人影や家具が動くなどの幻視ほほか、浮遊感、のし掛かられる重圧感、皮膚を虫が這う感じなどの身体幻覚がみられます。睡眠麻痺は、やはり寝入りばなに、目覚めているはずなのに身体を動かそうとしても力が入らず、声も出ないという、いわゆる「金縛り」です。情動脱力発作、入眠時幻覚、睡眠麻痺はレム睡眠に関連した症状です。レム睡眠では夢体験と骨格筋の脱力が生じますが、レム睡眠もしくはレム睡眠機構の一部が、通常健康な人では現れない覚醒中や入眠期に生じることが原因です。ナルコレプシーの発生頻度は日本人の600人に1人程度(0.16%)で、決して稀な病気ではありません。周期性傾眠症(別名、クライネ・レビン症候群)は稀な疾患です。思春期に発症し、2〜20日間持続する傾眠(嗜眠)状態を1〜数カ月、時に数年に一度の間隔で周期的に繰り返しますが、成人に達すると大部分が自然に消失します。傾眠期の初期には眠気が強く1日中眠り続けますが、尿意や便意があると覚醒します。無理に覚醒させても、不機嫌や抑うつが強く、無気力で、考えもまとまらず、記憶力も低下していることが多いため登校もできません。食欲や性欲が高まって盗み食いや自制を欠いた行動が見られることもあります。傾眠期の間欠期には特段の症状はなく、普段通りの生活が可能です。