不眠症

誰しも「眠ろうとしてもどうしても眠れない」という不眠体験をもっています。心配事がある時、試験前日、旅行先で枕が変わった、など原因はさまざまでしょう。いずれにせよ、通常は数日から数週のうちに また眠れるようになります。しかし、時には不眠が改善せず長期間にわたり続く場合があります。1ヶ月以上不眠が続く場合は、慢性不眠症と呼びます。不眠症は4つのタイプに分けられます。寝つきの悪い「入眠障害」、眠りが浅く途中で何度も目が覚める「中途覚醒」、早朝に目が覚めてしまう「早朝覚醒」、ある程度眠ってもぐっすり眠れたという満足感(休養感)が得られない「熟眠障害」です。不眠が続くと不眠恐怖が生じ、緊張や睡眠状態へのこだわりのために、なおさら不眠が悪化するという悪循環に陥ります。その結果、日中に心身の不調が出現するようになります。症状は、倦怠感、意欲低下、集中力低下、抑うつ、頭重、めまい、食欲不振など多岐にわたります。

このように、1)夜間の不眠が続き、2)日中に精神や身体の不調を自覚して生活の質が低下する、この二つが認められたとき不眠症と診断されます。

軽度の方も含めると、日本人では成人の約10%が不眠症に罹患しています。不眠の原因はストレス、こころやからだの病気、クスリの副作用などさまざまで、原因に応じた対処が必要です。主な不眠の原因とその対処法について簡単に表1にまとめたので参考にしてください。

ひだり

不眠対処の第一歩は先に挙げたようなさまざまな不眠の原因を診断し、取り除くことです。それに加えて自分流の安眠法を工夫することが効果的です。安眠のためのコツを表2にまとめました。

みぎ

眠れない日が続くと「また今夜も眠れないのではないか」と不安になり、「早く眠らなければ…」と焦れば焦るほど目が冴えてしまいます。不眠症の方が共通して経験する不安です。「一過性で終わるはずだった不眠が慢性化して不眠症になる」、その背景にはこのような「不眠恐怖」があります。

不眠が続くうちに寝床に向かうだけで緊張してしまい、夜になるのが憂鬱になってきます。そのようなときは「どうせいつかは眠くなるのだから、眠くなるまで起きていよう」くらいに割り切ったほうが好結果をもたらします。実際、「眠れないのに我慢して無理に寝床にいる」と不眠が悪化することが分かっています。

常識的な範囲内で寝床に入る時間帯を決めておき、眠れなければベッドから出る、前日の睡眠状態にかかわらず日中はなるべく活動的に過ごすことが大切です。前の晩に眠れなくて仕事に集中できない、眠くてしようがないという場合には、昼休みを利用して昼寝をするといいでしょう。10-15分で十分です。長い昼寝はむしろ不眠を悪化させます。たとえ短時間でも脳の疲労をとるのに効果があります。