食・運動と睡眠について
人や動物はなぜ眠るのか。睡眠の役割は数多く知られていますが、最も重要な機能の一つがエネルギーの節約です。飽食の先進国の人々とは異なり、過去も現在も大部分の生物は生き延びるのに最低限必要な食物しか入手できませんでした。そこで進化の過程で苦肉の策として編み出したのが、食物を探すとき以外は「できるだけ動かず」エネルギーを節約すること。すなわち、動かないことが眠りとして進化したのです。
逆に言えば、エネルギーをあまり消費しないエコ型の動物はあまり眠らなくても平気です。ここで問題。ゾウとネズミはどちらがエコ型動物でしょう。答えはゾウです。ゾウや馬などの大型動物はたくさん食べますが、体重当たりのエネルギー消費量は少なく、そのため1日2~3時間しか眠らなくても大丈夫。一方、ネズミやコウモリは〝燃費〟が悪く大食いの動物です。結果として、ガス欠を避けるため、12時間以上眠る必要があるのです。
ヒトでも同じような傾向があるといわれます。基礎代謝量が大きい人(大柄で筋肉量が多い人)やアスリートは睡眠時間が長い傾向があると言われます。現役を引退して運動量が落ちると睡眠時間が短くなります。高齢者は赤ちゃんに比べて、体重当たりの代謝量(必要カロリー数)が3分の1まで減少します。このことからも高齢者が赤ちゃん並みに眠ろうと思っても無理であることが分かります。言い換えれば、睡眠のニーズが減っているのです。
適度な有酸素運動でカロリーを消費する習慣を身に付け、基礎代謝を増やせば睡眠時間は長くなります。睡眠は十分に活動し、長めの休息が必要な人にやって来ることを憶えておきましょう。