適切な睡眠時間とは

神経科学の進歩のおかげで睡眠のメカニズムはかなり明らかになりましたが、今でも未解決なのが「人は何時間眠ったらよいか」という問題です。

現在の日本人の睡眠時間は平均7時間40分ほどですが、3時間程度で生活できるナポレオン型から10時間以上眠らないともたないアインシュタイン型まで実に大きな個人差があります。

なぜか日本では8時間睡眠を目標にする人が多いのですが、平均すると8時間ぐっすり眠れるのはせいぜい10代〜20代までで、以降は年々必要な睡眠時間が減ってゆきます。

若い頃から10年で10分ずつ短くなり、60代では6時間半ほどになり、80代になると平均睡眠時間は6時間を切ります。したがって、高齢者が夜10時すぎに寝床に入って朝5時前に目を覚ましてしまうのは自然な変化と言えましょう。若い頃のように眠りたいなどと無理な目標を持たず、「睡眠は量より質」「日中に大きな支障がなければいい」と開き直ることが大事です。睡眠不足は日中の眠気だけでなく、生活習慣病の悪化や記憶力の低下も招きます。ただし、「○時間○分以上眠るのが良い」という万人に通じる答えはありません。その人の、その年齢なりの睡眠時間が確保できていればよいのです。

困ったことに、不眠症の人ほど長く寝たがる傾向があります。寝床にしがみつく、眠れないままに、寝床でもんもんとした時間を過ごすことが不眠恐怖を悪化させる悪循環をもたらします。